さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



無謀なことだと、頭では分かっている。必ず後悔することになると警鐘が鳴っている。

だけど、忘れられない。あのひとの微笑みが、あの日の温もりが、私の名前を呼ぶその声が。

もう一生会えなくなるくらいならば、一縷の望みに賭け、その手を取ってしまいたい。


翔と遥風のロングトーンが、お互いをかき消すように、天を衝くように突き抜けて。

会場の緊張感が最高潮に達した──

刹那。


──ドンッ……!!


真っ白に染め上げる爆発的な照明。

バックスクリーン、荒れ狂う花吹雪。


眩いステージの中央にふわりと躍り出たのは──

千歳くんだった。


『花筏 流るる先に逢えるなら
ふたり身を 春の水面に溶かしましょう』


突き抜ける高音。

激情の奔流。


理性のすべてを薙ぎ払ってしまうかのような『熱』が──

心臓を貫き、爆ぜる。


──やっぱり私は、あのひとの手を振り払えない。


私を見る眼差しが好き。

凛としたその横顔が、私の前でだけふっと溶けるのが好き。

あなたが奏でるとびきり優しい笛の音も、桜を映して無邪気に輝く瞳も、全部が全部、大好き。


手を引いて連れて行って。

地獄の底へだって、一緒に堕ちてみせる。

あなたが居ない世界なんて、もう考えられないのだから。


とめどなく溢れる熱い恋情が、唄になり、押し寄せて、魂を震わせる。