さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



栄輔くんが、和傘をバッ!と勢いよく広げ、私たちの視界を遮って。

同時に、爆発するような勢いでバックスクリーンに吹き荒れる花吹雪。

ステージ上からも狂ったように花弁が降り注ぎ、私たちと栄輔くんの間に分厚い桜の壁を作った。


あたたかな幻想を物理的に断絶するような、真っ白に染まるトランジション。

それを最後に、煌めく少女時代が終わりを告げ──


彼女にとっての『試練』の幕が上がる。



『──朱の灯に名を溶かし 絹の影夜に咲く』



空気を一変させる、冷たく艶やかな低音ボーカルと共に。

ステージ下段に、鋭いスポットライトが突き刺さった。

その場に静かに佇んでいたのは──


天鷲翔。


ふ、と挑発的に眉を上げた彼に、会場が大歓声に揺れた。

──流石は絶対王者。会場を引き締めるオーラが、さっきまでの三人と比べても段違いだ。


バラバラな個性が、天鷲翔という『重力』によりグッと一点に収束され、綺麗にまとめられる。

色とりどりのパフォーマンスに一本太い芯が通ったかのような感覚に、思わずぶるりと震えた。


彼の羽織は、一見遥風と同じような色味だけど──

光に照らされると、それが深く静かな紺青色であることが分かった。

裏地もまた、遥風とは違って落ち着いた色彩で、彼のストイックさを表しているみたい。


憂いにかき濡れた歌声。

計算し尽くされた仕草。

その裏に滲む、冷たい覚悟。


その全てが、さっきまで栄輔くんが演じていた『無垢な少女』とのギャップを引き立て──

物語の中の彼女が潜り抜けてきた『地獄』の深さを、残酷なまでに仄めかす。