さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



…………今回のスタイリスト、ちょっと意味分からんレベルで有能かもしれない。


遥風の濡羽色の艶やかな髪を最大限に活かす、アンニュイな無造作セット。さらりと落ちる前髪が涼やかな目元に影を落とし、暴力的なまでの色気を生む。

着物みたいに深く合わされた襟元の、流麗なシルエットの羽織。表地は彼のイメージに合わせて漆黒だけど、飜ると内側の深い紅が覗く。内に秘めた熱の表現だろうか。

なんにせよ、皆戸遥風という人間の魅力を最大値まで引き出す神スタイリングに大!大!大感謝祭!!

生の皆戸遥風顔バカちっちゃいし背高いしであまりにもアイドル骨格すぎる。その俺様な視線に撃ち抜かれたい!!視線で殺してーー!!


と、そんなド変態絶叫をぶちかましたい気持ちが湧き出てきたけれど、流石にこの聖域を私の欲望の汚声で汚すような冒涜を犯すつもりはない。

私はただただ息を殺して、光の道を辿りセンターステージへと合流する遥風を目で追っていた。


そんな中、琴の音が一段と高く鳴り響く。


同時に、スポット中央の千歳くんが、華麗なターンと共に開いていた扇子をくるりと回し閉じて。

そのしなやかな羽織が風を孕んで大きく翻り、その軌跡が消える前に──

千歳くんはステージに膝をつき、祈るように深く項垂れて動きを止めた。