当然だ。声が出ないわけがない。だって、今回の彼のスタイリング……あまりにも、大正解をぶち抜きすぎている。
黒髪に染めた艶やかな髪をゆるく結い上げ、かんざしで留めるという激レア美麗ヘアスタイル。まとめきれなかった後れ毛が白い首筋に落ちているのが、とてつもない儚げな美と色気を醸し出していて。
多分、どれだけ千歳くんにブーブー言っていたアンチでも、この凄まじい美の具現を前にしたら流石に何も言え無くなって立ち尽くしてしまうと思う。
じゃあ千歳くんのファンにとっては、というと、言わずもがな無差別テロに等しい。多分もう何人か死んだ。これはオタク特有の誇張表現とかではなく、ガチの、本気の本気で、どっかの国を傾けられるんじゃないだろうか。これぞキングオブ傾国。
全観客が彼の立ち姿に釘付けになり、呼吸の仕方を忘れて心底見惚れていた──そのとき。
張り詰めた空気を溶かすように──
繊細な琴の音色が、流れ出す。
瞬間。
その旋律に呼応するようにして、千歳くんの手の中で扇子が魔法みたいにくるくるっ、と旋回した。
な、何それ、すごっ……?!
千歳姫、元からそんな扇子芸にも通じて……??いや、今回のために猛練習したのだろうか。
どちらにせよ、びっくりするくらいに洗練された高度な技術だ。腕が全く動いていないのに扇子だけ生きているみたいに動いてる……。
