ステージ開演前にも関わらず、周囲が引くレベルの熱量で仁義なき客席レスバを繰り広げる私たち。
いい大人が年下の女の子相手に大人気ないのは百も承知だ。けれど、怒り火の玉の私にはそんな理屈は通じない。意地でも、死んでも引くもんか。だってこいつ、さっき我らが千歳姫のこと鼻で笑いやがったんだよ。許される?!お前みたいな性格の歪んだ小娘が、どうしてあのお方の崇高な生き様を評価できる立場にいると思ってんの!?神ですよ、神!!跪けよ!!
「だって千歳刺さらんもん普通に!!色気ないし!!」
「戯言はパフォーマンスを見てから言えや!!」
「ステージの良し悪しなんか興味ないもんねーー!!」
「じゃあ帰れーー!!立ち去れーー!!ライブで京に見初められて楽屋に呼ばれる夢小説(笑)の続きでも書いとけーー!!」
一触即発。
私たちのボルテージは推しが登場する前に、推しを巡る宗教戦争によってとっくに限界沸点に達そうとしていた。
……と、その時。
ふっ、と突如、会場全体の明かりが落ちた。
先ほどまで興奮した観客たちの会話でざわついていた空気が、一瞬にして静まり返る。
さすがにこの張り詰めた空気感の中で殴り合いを続けるわけにはいかず、私たちはお互いにバチバチと火花を散らしながらも、不承不承で口をつぐんだ。
