私の言葉に、静琉はしばらく苦虫を噛み潰したような顔で黙っていた。
引き留める言葉を探していたんだろうけど、やがて諦めたらしく。
はぁ……と惜しそうなため息を吐くと、絞り出すように言った。
「分かったよ……」
いやいやいや、だからなんでそんな不本意そうなんですか。
常識的に考えて、デビューしたとしても男装を隠し通せるわけないのに。世紀の大炎上して会社ごと傾く恐れだってあるんだから、それでも私を残すのはギャンブラーすぎるよ。
内心ちょっと呆れながらも、私はそれ以上の会話を避けるように視線を車窓の外に移した。
……とりあえず、今日で一区切り、か。
寂しいけれど、これが最善の選択だったはず。
今日の四次審査、ファンの人たちの前で一度パフォーマンスをさせてもらえるだけで充分幸せなことだ。
アイドルの榛名千歳としてこういったステージに立つのは、きっとこれが最初で最後だと思うから。
今まで培ったことを全部、死ぬ気で出し切って、最高のステージにしよう。
群青の底に薄い光が滲み、白み始める空。
夜を溶かしていくその明るさを、ぼんやりと眺めながら──
私はひとり、静かにため息を落とすのだった。
