「……ま、そんなに俺が信用できんならやめりゃいいさ。俺の目的が果たされた今、もう千歳は自由なんだから。俺はお前の母親のように、お前の意思を潰してまで表舞台を強要するつもりはない──これからの道は、お前自身が決めていい」
そのきっぱりとした言葉に、私はちょっと目を見開いた。
そっか……確かに、大人たちの目的が達成された今、私はもうエマにいる必要はない。
強制力が無くなったということは、これからの道は自分で選べるということだ。
少し考えてみる。私が男装してオーディションに残る未来。
疲れるだろうけど……寂しくはないだろうな。
くだらないことで喧嘩したり、わちゃわちゃゲームをしたりする、平和な日常。ステージに立てば、彼らのキラキラした姿を一番近くの特等席で見守れる。いつも温かい言葉で応援してくれる、ファンの皆にも会えるし。
今までの孤独な人生が嘘みたいに、充実すると思う。
けど。
そんな夢はきっと、永遠には続かない。
性別詐称。隠し通すにはあまりに難しい、特大のリスクを私は抱えている。
もし露見したら自分のみならず、大切な仲間のキャリアがことごとくぶち壊しになる。今ですらリアコ層で炎上が燻っているのに、私が女だなんてバレたらそのときの炎上のスケールは恐ろしいものになるだろう。
私に関わってくれた人全てに迷惑がかかる。応援してくれていたファンの人たちも、裏切ることになってしまう。
もし奇跡的にバレなかったとしても、最近参加者が自分を犠牲にして私を優先するようなことが増えてきた。このまま残れば、彼らが私のために傷つくようなことが起こってしまうかもしれない。
自分が爆弾である自覚が、痛いほどにある。だからこそ、私の答えは深く考えるまでもなく既に決まっていた。
