さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「お前が桜井冬優に似てくれて本当に助かったよ。睦はとにかく冬優のことを忌み嫌っているんだ。自分の夢を託す子を産むため、トップアイドルの仙李を遺伝子目的で誘惑、のめり込ませ、用済みになったらゴミのように捨てた究極の悪女。睦にとって冬優は神殺しにも等しい禁忌を犯した大罪人だ」


……桜井冬優。


若い頃に大怪我をしてダンスができない身体になって以来、歌とダンスで魅了する『アイドル』という職業に異常な執着を見せていた、私の実の母親。


現実離れした美しさで、あざとく男心を弄ぶのに長けた女狐──

そんな評価は、業界でもちらほら聞いたことがあったけれど。

まさか、黒羽仙李さえ自分の野望のために利用していたなんて、夢にも思わなかった。


母親と黒羽仙李は、お互いに惹かれ合って恋人同士になったものだと思い込んでいたけれど──違ったんだ。

私の生まれたところに、愛なんて無かった。あったのは、ただ、母の野望と父の絶望だけ。

そう考えると、なんだか急にぽっかりとした空虚感に襲われてしまう。


そんな私の心境など気にせず、再度アクセルを踏みながら続ける静琉。


「で、ダメ元で榛名優羽に頼んでみたところ──なんと、とんとん拍子で桜井冬優が事故死!榛名千歳引き取り!完璧男装でエマプロ参加!と進んだものだからひっくり返ったよ。今までどれだけ睦を潰せと頼んでも、面倒だからって動かなかった優羽が突然乗り気になったのはいまだに奇妙だが、とりあえず俺の目的は達成できたんで結果オーライってことで。サンキュー」