睦は事務所内でとにかく幅を利かせていた。CEOであるはずの静琉は完全に外様扱い、自分の要求が通らなければ卑劣な手段を使ってでも強引に押し通す。
巫静琉は、そんな式町睦の自分勝手な行動にずっと腹が立っていた。けれど式町睦は毎回決まって証拠を残さず、猫被りで人望も厚いため、なかなか追い出すことができずにいたのだ。
そうなると、静琉が逮捕の決定打となる『事件』を必要とするのは当然。なんとか式町睦の冷静さを欠かせ、尻尾を掴んでやりたい──そう思ったのだろう。
そして、その時に巫静琉が目をつけたのが、私……って、ことは、つまり。
「『榛名千歳』は絶好の釣り餌だったんだよ。憎い女の顔をして、愛した男の光を放ち、自身の最高傑作を汚す。そんなとんでもない起爆剤を前にすれば、もしかしたらあの小賢しい睦も理性ぶっ飛ばして何かやらかしてくれるかもしれないと思ったんだ」
私の思考に重ねるようにして明かされた真実。
私はそれを聞いて、しばらく何も言えずに黙り込むことしかできなかった。
榛名優羽の我儘でこの番組にねじ込まれたわけじゃ無かったんだ。
全ては、巫静琉の策略で──LUCA合宿でのパフォーマンスで勝利し、睦の地雷を踏み抜き、危機に晒されるまで、全てがこの男のシナリオ通りだったってことだ。
