どんどんスケールの大きくなる話に頭が痛くなる私をよそに、静琉は続ける。
「まぁそんな繋がりで、榛名優羽の姪っ子であるお前のことは昔から知ってたよ。五年ほど前、商品価値を測ろうと一度レッスンを視察させてもらった時は随分感心させられた」
どこか懐かしむような口調で言いながら、ハンドルを切って大通りに合流していく。
「普通、十歳かそこらのガキは音に乗って気持ちよくなろうとする。そんな中でお前だけが異質だったんだ。 鏡の中の自分を、まるでもう一人の自分が上空から冷たく俯瞰しているような……指先の角度、視線の残し方、呼吸のタイミング全てがミリ単位で完璧。周囲には凡庸に見えても、俺には一目で分かったよ。コイツはきちんと父親の異才を受け継いでいる、ってな」
……そんなに昔から、私のことを知っていたなんて。
母親の檻に囚われていた頃の私は、とにかく必死で周囲を気にする余裕なんて無かった。だから、まさか私の表現がそんな時期から既に見られれていたとは思ってもみなかったし、自分が父親と同じ才能を持っているなんて、今静琉に言われるまで気づきもしなかった。
「で、まぁその当時は桜井冬優の拒否もあってスカウトは諦めたんだが……数年後、俺はお前が喉から手が出るほど欲しくなった。その理由は──」
信号が赤に変わる。
静かなブレーキと共に停止した車内で、ようやく静琉の視線がこちらを向いて。
「式町睦の暴走だ」
静かに、落とした。
……式町睦の暴走が、私をここに連れて来させた?
一瞬、わけが分からなかったけれど。
冷静に考えてみたら、今まで得た情報全てが次々に繋がって、一本の線の上で整列していく。
