「……にしても、すげぇな千歳。冨上栄輔はさておき、皆戸遥風や峰間京みたいなとんでもない問題児をここまでどっぷり沼らせるなんて。流石は、魔性の桜井冬優の最高傑作だ」
その明らかに含みのある口調に、私の息が一瞬止まる。
──やっぱり、この人、全部知ってるんだ。
私が女であることも、桜井冬優の娘であって、彼女の理想を託されて生きてきたことも。
それを全部分かった上で、男装した私をエマプロに招き入れて、四次審査まで通させて──
一体、何が目的なの?
「……私の母親と知り合いだったんですか?」
少し警戒した硬い声音で、静琉に問うと。
静琉は真っ直ぐに前を見つめたまま、いつもの気だるげなトーンでさらりと言う。
「知り合いも何も、昔から榛名家には散々お世話になってきたからなぁ」
……お世話になってきた?
その曖昧な物言いに思わず眉を寄せる私に、静琉は続ける。
「……察しの良いお前なら、そろそろ気づいたんじゃないか?『榛名優羽』という人間と、この事務所──『EMERGENCE PRODUCTION』の関係」
まるで私を試してくるようなその言葉に、ちょっとだけ腹が立ったけれど。
彼の期待を越えられないのもそれはそれで癪だったので、私は黙って思考を巡らせ始める。
