さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「興奮しすぎだろお前」

「あっいや違う違う違う興奮じゃないですからね?!緊張です緊張!!!!」

「でも聞いて千歳、コイツさっきお前のベッドに潜り込もうとしてて」

「ねぇ違う!!!嘘!!!!ガチ嘘!!!!」


目の前でギャーギャーと言い合いながらも、それで緊張がいくらか緩和されたのか、なんとか拘束を解いてくれることに成功する栄輔。


瞬間、胸の下あたりを締め付けていた圧が、ふっ、と抜けて。

同時に、今まで張り詰めていた神経が、一気に弛緩した。


途端──

今まで意図的に麻痺させていた心の中に、じわじわと暖かな感覚が染み込んでくる。


…………あ。

私、まだちゃんと生きてるんだ。


目の前で遥風と栄輔が言い合っているなんていつもの光景だけど──

その『いつも通り』に、ちゃんと戻って来れたんだ。


そう実感した瞬間。

自分でも気づかないうちに──

一滴の涙が、頬を伝っていた。


「……え?」

「あ、ごめっ……」


ハッとすぐにこちらに視線を向けた二人に、慌てて謝ろうとするけれど、つっかえて言葉が続かない。

急に泣き始めたら困るだろうに、申し訳ない。栄輔に至っては、急に青ざめて「俺がキモかった……?」とか言って責任感じ始めてるし。