さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



と、溜飲が下がるような思いで床にうずくまる睦を見下ろしていると──


「えっと、あの……えっ、えっ?」


パタパタと駆け寄る足音が近づいてくるのと共に、とにかく困惑し切ったような、少し上擦った声音が落ちてくる。


ハッとして顔を上げると──

栄輔だった。


口元を押さえ、まじまじと私の姿を見下ろしながら、すごく狼狽えている様子。

なんだろう……と自分の身体に視線を落としてみて──ようやく、気が付いた。


さらり、と胸元に垂れる薄茶色の地毛。

そうだった──私さっき、式町睦にウィッグを外されて、そのまま……!!

さあっ、と全身の血が流れ落ちるような感覚の中、何も言い訳できず硬直してしまっていると。


「お前、マジで千歳が男装だって知らなかったんだ」


栄輔の背後から、気怠げな足取りで遥風が歩いてくる。

さらり、と明かされた真実に、栄輔は数秒間完全に硬直した後──


「はぁぁぁぁぁあ?!?!」


さっきの睦の叫びにも劣らない声量で、素っ頓狂な声を上げた。