…………え?
何が起きたのか分からず、目を見開いたまま顔を上げると。
そこには──
いつの間にか睦の背後に回り込んでいた、京が立っていた。
長い前髪の下から睦を見下ろす瞳が、今までに見たことがないくらいに冷たくて──ぞくり、と背筋が戦慄する。
「スピってんじゃねぇよクソ老害」
吐き捨てながら、追い討ちで容赦なくその腹を蹴り上げる。
「がっ、はっ……!」
鈍い音とともに、睦の身体が再び崩れた。
そのまま京は、うずくまって苦悶の声を上げる睦の髪をを掴み、ぐいと引き起こして。
「司祭?器?再臨?別にそんなん勝手にやっときゃいいけどさ──
俺が今、何に一番キレてるか分かる?」
低く張り詰めた静かな声。
煮え立つような怒りと殺意を押し込めたまま、京はちょっと笑う。
「怖がって震えてる千歳の首に汚ねぇナイフ突き立てて……血ぃ出させたことだよ!!!」
──バキッ!!
瞬間、唸りを上げて睦の頬を打ち抜く拳。
頬骨が砕けたような音と共に、睦の首が横に弾け飛ぶような錯覚。
口元から、鮮やかな血飛沫が散って、ついでに前歯も数本飛ばされたみたいだった。
ひぇ……。
その衝撃的な光景に、思わず肩をすくめてしまいつつ。
内心では、いいぞもっとやれと笑ってしまう自分もいた。
式町睦には、二次審査の時といいLUCA合宿の時といい、地獄のような思いを散々させられてきた。
だから、これくらいの制裁は因果応報。なんなら、たかが数本の前歯で済まそうだなんて安上がりすぎるくらいだ。そのまま半殺しにされて、今まで遥風が受けてきた苦痛を存分に受け止めてほしい。
