「……何も知らないお前に、俺を止める資格なんかない。今、全世界で多くの人々が黒羽仙李の再臨を指を咥えて待っているが──俺はそんな狂信者たちの、唯一の司祭になり得る存在なのだから」
今にも怒りで叫び出しそうなのを押し殺したような声音で、静かに話し出す睦。
「いいか──望むだけじゃダメなんだ。仙李の魂が、そこへ居座らざるを得ない『器』を強制的に構築しなければならない」
そう言葉を重ねるたびに、押し殺していたトーンが震え、じわりじわりと熱を帯びていく。
「遥風が黒羽仙李の表現を究極まで突き詰め完全な『器』となった時、黒羽仙李は降りる。そして遥風をその域まで導ける人間は、一人しかいない。仙李の呼吸を、恐れを、迷いを、そして光を、一番近くで見続けてきたのは──俺だ。俺がやるしかないんだよ!!!!」
…………だからさ。
さっきから何言ってるのか全然分かんないんだって。
過度の執着は人を狂わせるとはいえ、ここまでヤバい人になることある?黒羽仙李の降神術でもしてるつもりなの?極端すぎて怖いよ……。
睦の叫びを最後に、倉庫の中は誰も何も言葉を発さず、沈黙に包まれていた。
そして、それを静かに破ったのは──
榛名優羽。
「……俺とのおしゃべりに気を取られてる余裕は、今のお前にはないと思うが」
静かな、至極冷たい言葉。
そしてその意味を、理解するよりも前に──
──ガンッ……!
鈍く、重たい衝撃音。
ぐら、と睦の身体が大きく揺らいで。
カラン……と音を立てて、ナイフがコンクリートの床に落ちた。
