目の前の光景を飲み込めず、頭が真っ白になる。
隣の睦が、ハッと微かに息を呑む音。
ゴリ……と遥風の頭に銃口を埋めながら、榛名優羽は薄く笑った。
「式町睦。俺が誰だか分かっているのなら……これが偽物ではないことくらい分かるだろう」
冷たい声でそう言った優羽が、ごく慣れた仕草でセーフティレバーをおろす。
「っ……!」
それを目の前にして、思わず泣きそうになった。
自分自身が睦にナイフを突きつけられた時なんかより何倍も大きな恐怖と焦燥──そして怒りが、ぐわっと押し寄せてくるみたいで。
自分の痛みなんて、もはやこの際どうでもいい。
私の首なんていくらでもかっ裂いていいから、今すぐその鉄の塊を遥風から引き離して欲しい。
その一心で慌てて抗議しようとするけど、さっきまでの緊張感と恐怖で喉がカラカラで、上手く声が出せなかった。
そんな私に一瞥も寄越さないまま、優羽は続ける。
「もしお前が千歳を殺すのであれば──俺は、お前が人生を懸けて作り上げてきたこの『作品』とやらの脳天をぶち抜くだけだ。それでおあいこだろう?」
「っ……榛名優羽……っ!」
怒りに満ちた声でその名を吐き捨て、鋭い視線を送りつける睦。
けれど、やはり遥風を盾にされてしまうと、一歩も動けないらしかった。
それは決して、愛ゆえの躊躇いなんかじゃない。
自らの最高傑作が壊されることを拒絶する──
芸術家の、執着。
