さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


だよね、こうなりますよね……。

本日何度目になるか分からない命の危機に晒され、本当に泣きたくなってしまう。


「これ以上近づいたら、榛名千歳の首をかっ裂いてやるぞ!!いいのか?!」


怒鳴る声が近すぎて、鼓膜がビリビリと震える。

刃先は微かに皮膚に食い込み、ほんのりと鉄の匂いが鼻先をかすめた。


「っ……く……」


その痛みに、声にならない声が漏れて、思わずじわりと視界が滲む。


…………耐えろ、自分。

痛いし怖いけれど……だからってパニックで泣き喚いても、いいことはない。睦を刺激するだけ。

ただ、自分の呼吸だけに集中して、恐怖と焦りを押し込めるんだ。


数秒間、誰も何も動かずに。

時が止まったような静寂が、空間を満たす。


そして──

永遠にも思える、長い数秒間の後。


カチャッ。

乾いた金属音が、響いた。


ハッとして顔を上げると──

榛名優羽が、黒光りする拳銃を遥風の側頭部に押し当てていた。


……え……?