千歳くんの義父は俺たちを振り返りもせずツカツカと廊下を歩いていたが、やがて最奥の部屋の前で立ち止まり、カードキーのようなものを扉にかざした。
ピッ、と小さな電子音と共に、カチャリと小さく鍵が開く音。
……え何こいつ、自分の部屋にカードロックとかかけてんの?どんだけやましいことに使ってんだよ気色悪いな。
「入りなさい」
違和感に眉根を寄せていると、不意に振り返られ手招きをされて、慌てて表情を元に戻す。
言われるまま足を踏み入れてみると、そこは書斎のような場所だった。
壁一面の本棚には難解そうな洋書やファイルがぎっしりと並び、部屋の中心にはL字型のデスク。
そして、その上には一体何に使うんだよって感じのモニターが5、6個。
モニターは今日は電源が切られているようで、普段何に使われているのかは分からないけど……ろくなことに使ってる感じじゃねーな。
その明らかに異様な雰囲気に気圧される俺、無表情を保ったままさりげなく部屋の中を観察する遥風、ふらふらと部屋の中を歩き回る京。
と、そんな俺らの様子など気にも留めず、義父は中心の巨大なパソコンの前に腰を下ろしてカタカタと何やら操作をし始める。
何をやってるんだ……?とちょっと覗いてみたけれど、スクリーンにはよく分からないPC言語のようなものが延々と表示されているだけで何も分からなかった。
本当に何者なんだコイツ?でもなんかハッカーみたいでかっこいいな……と、いかにも小物っぽい感想を抱いていたその時。
ヴーッ、とポケットの中に入れていたスマホが振動した。
