さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「誰行く?」

「母親だったら信頼勝ち取れる自信あるけど、親父じゃ無理だわ」

「栄輔。栄輔お前行け。外面だけは良いんだから」

「は、俺っ?!」


ぜ、ぜってー嫌なんだけど。俺千歳くんの義父にはシャレにならない嫌な記憶持ってるんだって!あっちだって俺のことをセクハラ野郎って認識してるだろうし絶対俺じゃない方がいい!

と必死に訴えたかったけれど、あんま拒否ったら俺が千歳くんに夜道でハグして怒られたことがバレるかもしれない。そうなったらコイツら絶対一生ネタとして擦り続けてくる。俺は煽り魔たちに自分からネタを提供するバカではないのだ。

俺は数秒間逡巡した後──やがて覚悟を決めると、インターホンに手を伸ばした。


ピーンポーン。


夜の静けさに響く、無機質な音。それが思ったよりデカく響いて、ちょっとドキッとする。

ってか、よく考えたらこんな時間にインタホーンを押すって非常識極まりないよな。ガチごめんなさい……でも非常事態なんで許して……。

と、半ば祈るような気持ちでビクビクしていた、次の瞬間。


『はい』


インターホン越しに、若い男の声が響いた。

聞き覚えのあるその声に、条件反射的に背筋が伸びる。

……同じだ。

あの時、俺にぞわりとするような視線を向けてきた千歳くんの『義父』と同じ声。