そんなふうに、パート分けで何度かバチバチに揉めつつも、遥風の進行でなんとか収束。
ある程度パートが決めが終了したところで、その日は解散となった。

そしてその翌日、そのまた翌日と練習は続いていく。

そんな練習の過程でもっとも苦労したことは、ダンスや歌よりも──とにかく、大喧嘩が起こらないようにすること。

少しでも油断すればどこかで火花が散るものだから、私はその仲介に奔走してばかり。
そんなこんなで気づけばあっという間に時間は過ぎ、練習が始まってから一週間が経とうとしていた。

パフォーマンスの完成度は、徐々に上がってきてはいるものの……やはり、まとまりに欠ける印象。
二次審査の準備期間では、3日に1回のペースで審査員たちの指導が入ることになっているんだけど、彼らはコメントの際に口を揃えてこう言った。

『チームワークが惜しいね』

個々の実力に関しては及第点。
しかし、メンバー同士の振り付けの擦り合わせが足りないせいで、それぞれが我流でパフォーマンスする羽目に。その結果、見せ場のシンクロダンスもいまいち迫力が出ないのだという。

このままだと、このグループは共倒れになる。

メンバー全員仲良しこよしなんてのは望まないけど、せめて練習中だけでも協力し合ってくれないかなぁ……。

内心でため息を吐きながらも、私はレッスン室へ足を踏み入れた。

「おはよー!今日も早いなぁ、姫!」

朝からハイテンションで迎え入れる、新海飛龍。

練習初日は終始ボケーッとしていてどうなることかと思ったが、後から話を聞くと、一次審査でアドレナリンが出過ぎて、前日徹夜してきたがためにあのテンションだったらしい。
それ以降の練習では、やる気もあって実力もある扱いやすいメンバーだ。
あえて改善してほしい点を挙げるとしたら、私へのウザ絡み……。

「ってか今日暇?ラーメン食べ行かん?通り挟んで向かいのラーメン屋。ばーり美味いらしいで〜」

私の肩に手を回し、楽しそうに話しかけてくる飛龍。
確か、参加者が勝手に外出することは禁止されてると思うんだけど。
私が断ろうと、口を開きかけたその時。

「あのさ、参加者は無断外出禁止だから」

グイッと飛龍を私から引き剥がしたのは、皆戸遥風。
不機嫌そうな表情で、飛龍を睨みつけている。

「おっ!遥風も行かん?俺とラーメンデート♡」

「きしょ」

「なんじゃこのクソガキ」

相変わらず、遥風との相性は悪いみたいだけど。
2人とも同い年なんだから、仲良くすればいいのに……。