さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

「でーきたー♡」

突如、背後で弾けるような声。
驚いて顔を上げ──視界に飛び込んできた姿に、ドキッとする。

そこにいたのは、一瞬女の子に見えそうなほど中性的な雰囲気を纏った美少年。
色の抜けたようなベージュの髪色、繊細に揺れる毛先。肌は透けるように白く、どこか危うげな雰囲気が漂う。

……ん、誰?

しばらく呆然として見つめる。
けれど、冷静に目鼻立ちを辿れば、その顔は紛れもなく自分のもので。

お粗末な男装しかできなくて、優羽が諦めてくれることを密かに期待していたのに。
鏡の中にいるのは、可愛さと少年らしさの絶妙なバランスを備えた美少年。

性別不詳な感じが、逆にミステリアスでいい味を出してる。

「キャーッ♡この淡い月光のような透明感!全人類フォーリンラブ待ったなし♡」

涼介さんがテンションMAXで騒ぐ。

顔は何も変わってないのに、ヘアスタイルだけでこの変化……すごすぎる。

「ささ、次は服ね。着いてきて♡」

手招きされ、呆然としながら奥の個室へ。

そこは巨大な衣装部屋だった。
煌びやかな王子様スタイルのステージ衣装、シンプルなレッスンウェア、スタイリッシュな私服まで、色とりどりの服たちが並ぶ。

涼介さんは次々とアイテムをピックアップ。

「この靴は、どれもシークレットシューズだから10cmくらい盛れるのよ♡」

一見普通の靴にしか見えないローファーやスニーカーを、まじまじと見つめる。
10cmも盛られたら、確かに男でも通用するくらいの身長になっちゃうな。

「これは胸をつぶすインナー、これは肩パッド。最高級品だから快適よ♡」

次々と渡され、そのまま試着室へと押し込まれる。

涼介さんの勢いに押され、私は与えられたものをすべて身につけると、鏡を見た。

その瞬間、息を呑む。

──自分で言うのもなんだけど、洒落にならないくらいの完成度だ。