さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


「……いや、それ言うと遥風お前もだぞ?!千歳くんの前で必要以上に甘ったるい声作りやがって」

「はぁ?作ってねぇよ」


さらりと真顔で一蹴する遥風。

いやいやいや、数年間ずっと一緒に練習してきた俺の目は誤魔化せないからな。

お前は女の子と話すとき妙に優しくなるし、そんな中でも千歳くんへの対応が一番甘い!!甘々すぎてゾワゾワするレベル!!

と、本気でイラつく俺の隣で。


「『千歳。いいよ、おいで……?』」


わざとらしい低音イケボを作って、峰間京が遥風のモノマネを始めた。

その悪意100%の誇張っぷりに、思わず本気で吹き出してしまう。峰間京、さっきまでは遥風と肩組んでいじめてきたくせに、ターゲットが変わった瞬間爆速で乗り換えやがって……。
その変わり身の早さにちょっとイラついたけど、そんなことより今めちゃくちゃおもろい。


「『よーしよし。可愛いなお前……』」

「は?やめろ誰だよ似てねぇよ」

「『一生オレのそばから離れんな……♡』」

「言ってねぇよそんなの!!気持ち悪りぃ」

「いや似てる似てるクッッソ似てる!!!」


バゴッッッ!!


涙目で手を叩いて爆笑していたら、何故か俺だけ思いっきり頭を打たれた。痛ったぁ……!!!

ったく、ひでえよ……遥風の猫被りは本当のことだろ。

実際、俺は遥風と仲良くなりたくて話しかけるのに、毎回めっちゃ雑に対応されてて……なのに千歳くんにはすーぐゲロ甘ボイスで肩抱きにいきやがって。悲しいんだぞこっちは!!

……と、感情のままに叫びたいところだけど。

よく考えたら、今は俺らで煽り合ってる時間なんてない。こうやって馬鹿なことやってる間に、千歳くんが危ない目にあってるかもしれないんだから。

冷静にそう考えた俺は、最年少にもかかわらず、自分が舵を取って話し合いを進めていくことにした。いや、マジで偉すぎるな俺。