さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



……と、そんな重苦しい沈黙の中で──


「よく分かんねーけどー」


と、呑気な声が落ちてくる。


「……とりあえず、お前の親父が暴走して、千歳を拉致ったってことでオッケー?」


峰間京が、ゆるい足取りでこちらに歩み寄ってきた。

いつものように軽薄な笑みを浮かべながらも、その瞳に滲む光は鋭い。


「……そうとしか考えられない」


と、遥風がちょっと苛立たしげに答えると。


──次の瞬間。

バッ!と空を切る音。


「──っ?!」


京の振り抜いた拳を、遥風が間一髪で避けたのだ、と気がつくのに数秒かかった。


「お前っ……」


顔をしかめる遥風に、京は何も答えない。

そして。


「ぐっ……!」


不意打ちでバランスを崩したところに、無言でもう一撃。

振り抜かれた足が脇腹に入り、遥風は顔を歪めて片膝をついた。


はっ……ちょちょちょちょ何やってんすか?!


何が起こったのか咄嗟に理解できず、俺は突っ立っていることしかできなかった。