さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



慌てて遥風に視線を向けるけど──

その表情は、いつもと同じ涼しい顔。


……この表情からなんで心当たりあるって分かるわけ?

心読めんのかよ、とちょっと眉根を寄せていると。


「……少しな」


遥風が言いながら、ちょっと肩をすくめた。


……えっ、マジ?


「お前、心当たりってどういうことだよ」


慌てて聞くと、遥風は至ってちょっと考え込むような間の後──

いつものように、淡白なトーンで話し出す。


「──式町睦だよ。あいつ……LUCA合宿のステージで、多分千歳と黒羽仙李を重ねて見たんだと思う。俺も千歳のパフォーマンス見た時、あいつ暴走するかなって心配してたんだけど……意外にもあっさり俺が日本に残ること認めてくれて。おかしいなとは思ってた」


その言葉に、俺は何も言えずに固まった。


……何もかもが、あの場で一件落着したと思っていたのに。

そんな俺の考えは、あまりに浅はかだったらしい。


式町睦は──自分の『作品』を脅かす存在になる千歳くんを、本気で排除しにきているんだ。


昔から、あの人はおかしかった。

一緒のダンススタジオに通っていた時、レッスンが終わったらすぐに遥風を迎えにきて、有無をいわせず手を引いて連れていくあの光景を何度も見てきた。

時たま俺を見るその目は、何故だかゴミクズでも見るかのような嫌悪感に満ちていて。

そんな異様な『父親』を目にしていたからこそ、俺はどうしても、遥風のことを嫌いにはなれない。

遥風の性格が、あの人によって意図的に歪められたものだって、わかってるから。