嫌な予感がして呼吸が浅くなる俺の横で、まず行動に出たのは遥風だった。
サッとその場に膝をついて、落ちていたスマホ周辺の床を確認する。
俺も彼の行動に倣って、慌てて見てみると──
ワックスのかかった廊下に、黒い跡が残っていた。
……シューズの跡だ。
ダンスシューズって、靴底がラバー素材のものが多いから、ステップなんかで引きずったときに床に鉛筆みたいな黒い跡がついてしまうことが多い。
そのごく見慣れた跡が、足をずるずると無理矢理引きずったみたいな、不自然な軌道で床に残っていた。
……これ、無理矢理連れ去られた痕跡?
と、そんな俺たちから少し離れたところで──
京はポケットに手を突っ込んだまま、天井の隅に設置された防犯カメラを目を細めて確認していた。
「……LEDインジケーターが切れてる。これ、動いてない」
そう話す京の声は、いつも通りの軽薄さは薄れて、張り詰めた緊張感があって。
明らかにただ事ではない空気に、俺は思わずゴクリと生唾を飲んだ。
靴跡、作動していない防犯カメラ、残された千歳くんのスマホ。
その全てが、ここで何があったのかを嫌というほど鮮明に語ってくれる。
京はゆったりと俺たちを振り返ると──
「ねぇ」
言いながら、遥風に睨むように視線を合わせた。
「皆戸くんさぁ。その顔──なんか心当たりあんだろ」
えっ、なんか分かってんの、お前……?!
