「今ここで死にます」
気がついた時には、そんな言葉が口をついて出ていた。
睦の表情が、ぴしり、と音を立てて固まる。
あり得ないものを見るような表情。
……そうだよね、分かる。自分でもびっくりだ。
告発さえすれば、被害者として同情されながら、望み通り芸能界から降りられるのに。
せっかく提示された生路を自分から断つなんて、あまりにも馬鹿らしい。
そう思うのに──何故だか今は理性がろくに働かなくって、私は言葉を止めることができなかった。
「大切な人たちの未来だけは、壊したくないんです。人間として欠落してる変な人ばっかりですけど……それでもみんなそれぞれ、ステージに人生を賭けてるから」
作品として扱われながらも、アイドルに光を見出し努力し続けた遥風。
壮絶な過去を燃料に、魂の切り売りで歌い続けることを選んだ京。
壊された青春を取り戻すため、孤独を経て再び夢を掴もうとする栄輔。
汚い世界で、傷だらけのまま、それでもなお美しく立ち続けようとする彼らの姿が──
私は好きだったんだ。
背後では、拘束された手が震えていた。けれどそれを抑えつけるように拳を握り込んで、私は続ける。
「ファンが、信じて待っている場所なんです」
本当は怖い。
「仲間が、命を削って立っている場所なんです」
もう会えないなんて嫌だけど。
「自分の手で汚すくらいなら──
どれだけ痛い思いをして死んだっていい!」
恐れを振り払うように、真っ直ぐに言い放った。
一瞬の、沈黙。
睦の瞳は、真っ暗な濁りを燻らせ、私を見下ろしていたけれど。
やがて──
「……もういい」
苛立った声と共に、ナイフが振り翳される。
反射的に、キツく目を閉じた。
──刺される。
そう確信した、刹那。
──ドガァンッ!!
轟音。
地面が揺れるような、衝撃と共に。
倉庫の厚い鉄扉が──火炎に包まれて吹き飛んだ。
