睦は、硬直する私の首元スレスレにナイフを突き立てて。
低く、耳元で囁いた。
「選択肢は二つ──今ここで死ぬか、俺のシナリオに従って巫静琉を潰すかだ」
…………え?
一瞬何を言っているのか分からず、反応が遅れる。
巫静琉を潰すって、なんで……あ、この人まさか、静琉を引き摺り下ろすことで遥風のLUCA移籍を強行突破しようとしてる……?
その選択肢の意図を汲もうと思考を巡らせる私の前で、睦は胸元のポケットからボイスレコーダーを抜き出した。
「何も悪い話じゃないだろう。今ここで、マイクに向かって告白すればいいだけだ──自分は、社長に男装で参加を強制させられた可哀想な被害者です、と」
思わず、息を呑んだ。
その条件だけ聞けば確かに彼の言う通り、私にとってそこまで悪いものじゃない。
だって普通に考えればこれは、式町睦の脅しという免罪符を使って芸能界から逃げる絶好のチャンス。
嫌われて脱退するなんて小細工よりもよっぽど不可抗力で、真っ当なシチュエーション。
ナイフを突きつけられたとなれば、榛名優羽も流石に文句は言うまい。というかそれ以前に、殺されてしまったら元も子もないんだから、従う以外に道はない。
