「お前は、遥風に中途半端に寄り添って、彼に植え付けてきた孤独、哀しさ、狂気の美しさを全て壊しておいて、『血』の力だけで、仙李の表現を再現してしまった。それはつまり──俺のこれまでの努力を一瞬にして踏み潰すことなんだよ」
…………やばい、この人。
さっきから何言ってるのか、全然分かんない。
孤独やら哀しさやら、そんな感情操作をしてまで遥風を仙李の模倣品に無理やり仕立て上げてたってこと?
彼がようやく掴みかけていた本物の感情を、全部否定して、自分の望み通りにねじ伏せるなんて──
おかしい、と言葉にしたかった。
あの日、深夜練のスタジオで遥風への虐待を目撃した時みたいに、感情のままにぶつけたかった。
けれど──
今ここでそれを言ったら、このナイフが首元に突き立てられる。
死んでしまったら元も子もないので、私は口をつぐむしかできなかった。
「本当は、今すぐにでもお前を滅多刺しにして息の根を止めてやりたい。だが今のお前には、まだ使い道がある。駒になる人間を、感情で潰すほど俺は愚かではないからな」
ゆっくりと、低く話す睦の声は、どちらかというと自分に言い聞かせているみたいだった。
……ギリギリで、理性を繋ぎ止めている。
この人を、今少しでも刺激したら──
今度こそ私の人生、終わる。
