睦の手が、さら、と私の長い髪を耳にかける。
「……お前に、黒羽仙李を継ぐ意思はあるか?」
息が、止まる。
耳をなぞる、その仕草こそ優しいものの──
その目に瞬くのは、決して優しさとは程遠いもの。
自分の作品に付着した汚れを見るような、冷たい目。
……ここで答えを間違えたら、終わる。
本能的にそう察知した私は、冷や汗を滲ませたまま、なんとか細い声を絞り出す。
「っ、まさか……私なんかが、烏滸がましいです」
と、そう答えると。
睦の瞳が、すうっと冷たく細まった。
「命拾いしたな。もし君が頷いていたとしたら──
俺はきっと衝動を抑えきれず、お前のことを刺し殺していた」
そんな言葉と共に、睦が手にしたのは──
銀色に光る、ナイフ。
「っ……!」
思わず身を捩ろうとして、ナイロンテープが体にキツく食い込む。
痛みに顔を歪める私に、睦はまっすぐにナイフを向けた。
「君の表現には、確かに仙李の片鱗があった。美しかったよ。ただ──
お前がその顔で、仙李のような表現をすることだけは許容できない。虫唾が走るね」
相変わらず、感情を悟らせない静かな声。
けれど、その奥に押し隠された狂気を嫌でも感じ取ってしまい、ぞく、と背筋が戦慄する。
呼吸を止める私に、続ける睦。
