──カシャン。
何かが金属に当たる、微かな音で目が覚めた。
「……っ、ん……」
まぶたが、重たい。
頭の奥がずっしりと痛んで、全身がだるい。
息を吸い込もうとした瞬間、鼻をついたやけに埃っぽい空気に、ちょっとむせそうになる。
顔を上げると、まず飛び込んできたのは──
錆びた鉄骨。
コンクリート剥き出しの壁。
積み上げられた段ボールの山。
そのただ事ではない光景を前に、朦朧としていた意識が一瞬にして起こされる。
……どこ、ここ。
慌てて視線を下ろし、自分の状態を確認してみる。
胴体を、ナイロンテープで柱のそばにくくりつけられ──
両腕には、金属製の手錠がはまっていた。
「……え」
思わず、手を動かそうとしてみる。
けれど、ちょっと引くだけで、すぐに硬い制止がかかった。
ガチ、と手錠が締まる感覚と一緒に、金属のエッジが容赦なく手首に食い込んでくる。
「痛っ……」
なにこれ、キツくかけすぎでしょ。手錠って、こんなに痛いものなの……?こんなキツいイメージなかったんだけど。
手錠の長時間の圧迫で血の巡りが悪くなっているのだろうか、手先がジンジンと痺れ始めていて、思わず顔を歪める。
──っていうか、今、何時?
私、明日……いや、今日、四次審査本番なんだけど。
一体誰が、何の目的でこんな誘拐を……悪質なファンとか……?いや、そんな人がセキュリティの厳しいエマの内部に入り込めるはずがない。
じゃあ、一体誰が?
言いようもないほど大きな不安が湧き上がって、全身が微かに震え始める。
