十秒……?!
一瞬で終わると思ってたのに、と絶望的な心境になる私をよそに、彼はクスッと笑いを落とし、わざとらしく腕の力を強めてきて。
「1、2、3、4……」
遥風にぎゅうっと抱きすくめられているせいで視界が遮られて、周囲の反応は見れない。それがとにかく怖すぎる。
身体を硬直させてしまう私に、遥風はあやすように背中をすりすりと撫でてくる。
こんな動画が世界に出たら確実に悪ノリ以上の何かを勘付かれるし、遥風のリアコから物理的にナイフが飛んできそう。頼むから全部カットして、お願い……!!
「9、10。はい終わり」
篤彦のカウントが終了した瞬間、私は反射的に遥風の肩を突き放し、ずざっ!!と音がしそうな勢いで彼から距離を取った。
冷や汗がじわりと滲み、心臓は全力疾走、精神疲労はもう限界。
周囲の表情を確認する余裕もないまま、私は──
「ごめん一旦外出てくる!!」
とだけ言い残し、逃げるように部屋から飛び出した。
バクバクと痛いくらいに暴れる心臓、熱い頬が、静けさの満ちた冷たい廊下に出てなおさら意識されてしまう。
走る寸前みたいな早足で廊下を歩きながら、私ははぁっと大きくため息を吐き出した。
篤彦も遥風も、本当に何考えてんの。
せっかく番組のためを思って自衛に全振りしてるっていうのに、どうしてそっちから無理矢理スキンシップの機会を押し売りしてくるのかな。ほんっと疲れる……。
