「……あーあ。避けんなよ」
私の視線の反対側から、苛立ったような声が飛んできた。
──聞き慣れた、気怠げで軽薄な声音。
ぎこちない仕草で振り向くと──
立っていたのは、峰間京だった。
無造作にポケットに手を突っ込んだまま、ツカツカとこちらに歩いてくる。
そのハイライトの無い瞳は、ゾッとするほど静かな色を携え、遥風を射抜いていた。
……あ。
これ、やばい、かもしれない。
普通に死人が出てもおかしくない殺気を感じて、私は思わずこくりと喉を鳴らした。
「もし間違えて千歳に当たっちゃったらどうしてくれんのさ」
「お前が投げたんだろうが」
遥風のもっともなツッコミを華麗にスルーして、京はそのまま私のもとに歩み寄ってくると──
グイッ!
強い力で私の二の腕を掴み、ソファから立たせた。
「部屋帰ろ、千歳」
ニコ、と表情は微笑みかけているものの、その腕を掴む力の強さと、私の答えも聞かずに引っ張っていこうとする強引さから、彼が激怒していることは明らか。
このまま部屋に帰ったら嫌な未来が待っているのは確実で、思わず足が竦んでしまう。
