さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……嫌じゃないんだろ。こういうことすんの」


砂糖を溶かしたような甘い声が、耳元でふっと囁かれて。

パニックで固まる私を、ソファ横の壁に押しつけるみたいに閉じ込める遥風。


「っ……」


真正面から向き合い、久々に間近で香る遥風の匂いに、条件反射で心臓が暴れ始めた。


近くで見た時の顔の破壊力、やば……。


いつもより少し乱れた前髪の隙間から覗く瞳が、喉が焼けそうなほどに甘い色気を帯びていて。

視線を合わせたら抗えなくなりそうで思わず俯くけれど、遥風はそれを許さない。


「名前も知らない画面越しの奴の言葉より、お前の気持ちを尊重するけど──」


言いながら、火照った頬をするりと撫でてきて。


「こういうののせいで責任感じて、俺のこと避けてたの?」


そのまま、顎を指でくいと持ち上げた。

無理やり、視線が交錯させられる。


「答えて」


誤魔化すことなんてできない距離で、熱っぽく掠れた声で促されて。


嫌じゃない、って。

思わず、本音が口をついて出てしまいそうになる。


けれど──

やっぱりここで流されてしまったら、絶対にダメだ。


せっかく遥風を守りたくて、距離を取ろうって今まで必死にやってきたことが、全部振り出しに戻ってしまう。