ケミ需要があるのは事実だけど、それ以上に、多くのファンは推しが仲間と夢を追いかける姿、ステージで輝く姿の方が見たいのだ。アイドルとしての遥風が好きなのに、恋をする男のような姿を見せられてしまったら、違和感を覚えるのは当然。
そして一番怖いのが、これを思っているのは遥風のファンだけではなさそうだということ。
きっと京推しにも、栄輔推しにも、飛龍や遼次や明頼のファンたちにも同じようなことを思っている層は少なからずいるはず。
……完全に、私が火種になっている。
そう改めて突きつけられたようで、全身からさあっと血の気が引くような思いだった。
遥風の夢を守りたい!とか大層なこと言っときながら、結局自分が足枷になってたら意味ないじゃん……。
やっぱり、今後も彼との距離感は徹底的に管理していかないと。
と、一人強く決意した──その時だった。
「何見てんの」
不意に、頭上から聞こえてはいけない人の声が聞こえた。
……あっ。
反射的にソファから立ちあがりかけたけれど、今回は一歩早く腕を掴まれて、グイッと強引に引き戻される。
ドサッ、と再びソファに沈んだ私の隣に腰を下ろしたのは──
遥風だった。
「そう何回も逃がさねーって」
勝ち誇ったような笑みを浮かべ、ふっと首を傾げて顔を覗き込んでくる。
距離を取らなきゃと確信した矢先に、この失態。逃げないといけないけれど、腕をしっかりと掴まれているせいで叶わない。
失敗した……一日中ぶっ通しでリハだったせいで疲れてて感覚が鈍ってるせいだ。いつもだったら捕まる前に察知して逃げられるのに!
