嬉しくて堪らない。
揶揄いたくて仕方ない。
そんな含みを持たせたみたいな彼の表情に、ちょっと嫌な予感を覚えたと同時に。
遥風は躊躇なく、ツカツカとこちらへ歩み寄ってきた。
「っ、待っ──」
まともに抗議をすることすら許されず、グイッ!と強引に肩を抱き寄せられる。
ふわ、と鼻先を掠める遥風の香り。その腕の力は強くて、身じろぎしようとしてもできない。
……やばい。
逃げ場を塞ぐようにしたまま、近い距離からふっと顔を覗き込んでくる遥風。
さら、と流れる前髪の奥、涼やかな印象の目元が甘く細められる。
「なんで?俺はずっと隣に置いておきたいんだけど」
──近、すぎる。
いや、別に今までも彼がこの距離感で接してくることは普通にあったんだけど──
その時と今とでは、わけが違う。
私が遥風に少なからず特別な感情を持っていることが、本人にバレてしまっている。だからこそ、遥風はもう『友達』を演じる気なんて微塵もないんだ。
「……てか、お前今日もマジで可愛いな。一回キスしていい?」
「はっ……?!」
慣れた仕草で髪を撫でながら、甘いトーンで落とされた爆弾発言に、声がひっくり返りそうになる。
待って待って待って、なんでこんな距離感バグってるの……!!
流石に焦って身を引こうとするけれど、それを見透かしたようにグッと腕に力を込められ、さらに身体が密着する。
私の反応ひとつひとつを確かめるように、じっと見下ろしてくる視線。
私と京が付き合っていないと分かった瞬間、こんなにも分かりやすく迫ってくるようになるなんて……危険すぎる。
私の気持ちはともかくとして、こんなに目立つところでキスなんて言語道断。
力では勝てないし、一体どう抜け出せば……!!
