さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


と、そんな私の心境を知ってか知らずか、遥風はポケットに手を突っ込んだまま、ふっと距離を詰めてきて。


「……てか、めっちゃ良い匂いするけど。なんかつけた?」


なんて言いながら、私の髪のすぐ横に顔を寄せてきた。


──待っ、近っ……。

思わず息が止まって、身体に力が入る。

と、そんな私に流石に違和感を覚えたのか、遥風の綺麗な瞳が至近距離からこちらに向けられ、目が合って──


…………ズザッ!!


私は、ほとんど反射的に遥風から距離を取ってしまった。


「あ、あんま近づかないで…………ください……」


ちょっと驚いたような顔の遥風に、消え入りそうな声で、なんとか絞り出す。


……あーもうダメだ、さっきから情緒がおかしすぎる。

昨日のことは考えないようにしようとか言っといて、動揺しまくって全然ダメじゃん……!!


こんなに自分の感情をコントロールできなくなったのは久しぶりで、パニックと自己嫌悪で思考がぐちゃぐちゃになってゆく。

と、そんな私を前に、遥風は少し目を見開いていたんだけど──やがて、何かを察したみたいに、ふっ、と。

堪えきれなくなったように、口元を緩めた。