さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



──え?


突然のことに何が起こったか分からないまま、反射的に振り向くと。

背後に立っていたのは──遥風。

そして、その片手には、さっきまで私が持っていたはずのスマホがあった。


まさか──


嫌な予感に、さぁっと血の気が引いたのと同時に。


「遅えよ、バーカ」


彼の挑発的な笑い混じりの声が、電話越しの京に放たれた。


『は──』


京が何か言い返そうとした声は、最後まで続かず。

遥風の指が、通話終了ボタンをタップする。


──ブチッ。


強制終了させられた通話を前に、私は顔を真っ青にして硬直した。


なっ……ななななんてことをしてくれてんですか……?!

峰間京のこと甘く見過ぎ!冗談抜きで夜道で刺客にぶっ刺されるって……!


などなど、色々と言いたいことはあったけれど、そのどれもが喉につっかえて言葉にならないまま。

そんな私に、遥風はくるりと向き直って、スマホを返してくる。


「おはよ」


至って普通のトーンで、さらりと挨拶される。

陽光に淡く透ける、濡羽色の髪。煌めいて揺れるピアス。ふっと片口角だけを上げた微笑みは余裕があるようだけど、その瞳はいつもよりずっと甘くて、柔らかい光を携えている。


「身体大丈夫?」


何も答えられない私に構わず、ちょっと首を傾げて聞いてくる遥風。


……熱が下がったかどうかって意味?それとも、もっと別の……なんていうか、そういう意味?


盛大に動揺しかけるのをなんとか抑えつつ、「うん」と頷くだけで目を逸らす。

目が、合わせられない。いつもみたいに友達感覚で話せない……今の私、めちゃくちゃコミュ障みたいになってない?重症すぎる。