さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


恐る恐るスマホを耳元に掲げ、最初のワンコールすら鳴りきらないうちに。


『お前さぁ、何回電話したと思ってんの?!』


即答。

京の取り乱したような、焦燥の滲んだ怒号が、右耳を貫いた。

まさかこんなに早く出るとは思っていなかった私は不意を突かれ、ビクッと肩を震わせる。


……きっと、私のことが気がかりすぎて、ずっとスマホを片手に連絡を待っていたんだろう。


今まで聞いたことがないような京の剣幕に怯えてしまいつつも、私はなんとか謝罪の言葉を絞り出す。


「っ、ごめん……!」


少し掠れた声でそう返すと、一瞬、スマホの向こうの空気が固まった。

私が萎縮したことを読み取ったのだろうか、少し逡巡するような気配の後──

はぁ、と自分を落ち着かせるようにため息を吐く京。


「……いや、怒鳴ってごめんね?ずっと不安すぎて余裕なかった」


苛立ちを抑えるような声音で、そんなことを言う。

……京がここまで声を荒げるのって、初めて聞いたかも。

それくらい心配をかけさせてしまっていたんだ、と痛いほどに自覚して、どうしようもない罪悪感がじわじわと広がっていく。

と、そんな私に、電話越しの京が不機嫌さを滲ませたまま聞いてきた。


『……てか、皆戸遥風と泊まりとか俺の目届かないじゃん。何もされてない?』


そう問われ、思わずぎくりと表情が強張った。


──鋭い。

私はずっと、遥風はなんとなく真面目で、衝動的に襲ったりはしてこないタイプだって思ってた。

けれど、京はちゃんと、遥風が私に『何かする』奴だって見抜いてる。

やっぱり、男同士だから分かるものってあるのかな。

若干冷や汗を滲ませつつも、私は声のトーンを調節して動揺を押し隠す。


「どういう意味?」

『分かるでしょ?皆戸遥風ほどお前を抱きたがってる奴、他に居な──』


と、その時。

耳から京の声が遠のき、スマホの重みがふっと無くなった。