さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜

ふと、隣に座る菅原琥珀と目が合う。

「一緒じゃん、姫♡」

げ……。
カメラが回っている手前、邪険にはできない。軽くを会釈してから視線を逸らす。

やっぱ菅原琥珀、苦手なタイプだ。常にノリが軽薄そうっていうか、バカっぽいっていうか……。
一見峰間京みたいな印象だけど、京みたいに影のある感じもなく、ただその場のノリで生きてるみたいなパリピ感。
考えなしの言動をして、簡単に炎上しそう。

考えれば考えるほどネガティブな方向に思考が傾く。悪い癖だ。

一旦思考を切り替えようと、私は他のチームの課題曲を確認してみる。

まずはTeam1、『セレナーデ』。

懐かしい曲だ。エマプロ1期で誕生した大人気アイドルグループ、『SiESTA』のデビューアルバムに収録されている。
王道の王子様コンセプトで、かつて人気少女漫画の実写映画の主題歌にもなった名曲。
10年経った今でも愛され続ける、グループの成功を決定づけた一曲だった。

そして、その課題曲を担当する主なメンバーは、天鷲翔、冨上栄輔、兎内双子。
……うん、文句なしに強いメンツ。
クセの強いメンバーもいるけど、全員プロ意識が高く、パフォーマンスには真剣に取り組むタイプ。スムーズに仕上がりそうで羨ましいな。

そしてTeam3、『Midnight Candy』。

こちらは、今流行りのニュートロディスコ系の楽曲。昭和のヒット曲『ミッドナイト・キャンディ』を、昨年ソロシンガー『LENE』がリミックスして大ヒットした曲だ。
80’sテイストのシンセサウンドとグルーヴィーなベースが特徴で、大人びたトレンディな雰囲気が求められる。

峰間京、椎木篤彦の色気のあるパフォーマンスとマッチしそう。

対して、上位層は少ないくせに、不安要素は圧倒的に多いTeam2。
自我の強い参加者が多いから、パフォーマンス以前に、人間関係において大荒れしそうな予感。

私の杞憂だったらいいけど……。
私は少し憂鬱になりながら、壇上のプロジェクターをじっと見つめるのだった。