さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



全身から力が抜けた隙をついて、どさりと押し倒され、上体がベッドに沈んだ。

唇は離れたけれど、変わらず逃げ場は無い。


「……好きだよ、千歳。大好き」


甘く、熱っぽい声音が落ちた。

理性が焼き切れたみたいな、余裕の崩れた表情の遥風。

その息遣いはいつもよりだいぶ荒くて、多分もう、引き返す気なんてないんだと悟ってしまう。


動揺、恋心、羞恥──

色々な感情が詰まって、心拍数がバクバクと上昇して。


そんな私を見透かすかのように、遥風は私の心臓あたりに手を触れてくる。


「はっ、やば……。どうしたの、これ」


喉が焼けるくらい甘い声で、揶揄うように聞いてくる遥風。


……心音を聞かれるのって、服を脱がされるよりも無防備。

心の中まで覗かれてしまっているのと同義なんだから。


触れられ続けるとさらに鼓動が加速して、それがあまりに恥ずかしくて目を逸らしてしまう私に。

遥風はぐい、と耳元に唇を寄せてきて──


「千歳は俺のこと、どう思ってんの?」


甘い囁きが、低く、脳を撫でる。


「答えて」


命令するような言葉と一緒に、催促するようにするりと心臓の上を優しく撫でられる。


「っ……わかんなっ……」


今、ここで踏み込むのは違う気がした。

このまま、流されるのだけはダメ。

そんな脳内の警鐘に従って、震える声で必死にはぐらかそうとするけれど。


──そんな曖昧な私の態度が、逆に遥風に火をつけたみたいで。



「……そ。じゃあ分かるまで続ける」



途端、唇が重ねられる。



「──っ、ん!」



言い返そうとした言葉は、また強引なキスで押しつぶされ、喉の奥でくずれた。


逃げ場なんて、どこにもない。


無意識に、鼻から甘ったるく短い息が抜けてしまうたび、煽られたようにキスが深く、熱くなって。


「っ……は、……っ」


酸素が、足りない。

思考が、溶解する。



「……力、抜いて」



耳元に落とされた、焦れたような声を最後に。


ぐらつきながらも、なんとか繋がっていたはずの理性が──

ふっ、と霞んでいった。