さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「……別に」


慌てて、漏れ出す感情になんとか蓋をして。

突き放すような声音と共に、目を逸らす。

けれど。


──グイッ。


頬に手を添えられ、強引に顔を向き直させられた。

遥風が、逃げ場を塞ぐみたいに、ギシッとベッドに手をつく。

至近距離で、綺麗な瞳と視線が交錯して。

石鹸と体温の混じった遥風の匂いに、胸がきゅっと痛くなる。


「……目、見て」


……ちょっと、待って。

今、本当にダメだから。


自分でも、明らかに顔が赤くなってるのが分かる。

あまりに恥ずかしくて、涙が滲みそうで、視線を斜め下に逸らす。



「…………無理、」



声が消え入りそうに細く震えた──

次の瞬間。


両手が頬を包んで、逃げられない角度で固定され──

唇を、奪われた。


「っ…………?!」


触れられるだけのキスじゃなくて──

深く、じっくりと味わってくるみたいなキス。


動揺して、慌てて胸板を押し返そうとするけれど、びくともしなくて。


それどころか──

『集中しろ』とでも言うように、頬を包んだ指先で両耳を塞がれた。


聴覚を遮られてしまったせいで、キスの水音だけがやけに大きく反響して。

強制的に、思考が塗り潰されていく。