さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



「遊んでた奴らならとっくに全部切ってるよ」


予想外の言葉に、すぐには反応できなかった。

……あそこまで派手に遊んでたのに?

私に怒られるのが嫌で嘘を吐いているのかとも思ったけれど、そのどこか焦ったような表情を見るに、そんなことはなさそう。


……でも、そっか。

ってことは、じゃあ。

遥風はもう、女遊びをしてないと自分を保てなかった時ほど、追い詰められてはいないってことだ。


紛らわさなきゃいけなかった彼の中の『痛み』が、和らいできている証拠。

遥風が、それで前より少しでも生きやすくなれてるんだったら──


「なんだ…………良かった」


自然と、少し表情が綻ぶ。


ちょっとずつだけど、確実に、遥風の中の深い傷が癒えてきている。

そんな実感が湧いて、自然と胸の中がじんわりと暖かくなった。


──と、その時。


「…………良かった?」


低く静かな声で、聞き返される。


目を向けると、遥風はじっ、と私を見つめていた。

まっすぐ、その真意を測るように。


少し張り詰めたような雰囲気に、ぎくりとする。私、なんか地雷踏んだ……?

と、少し焦ってしまっていた、その時──



「……千歳は、俺が女遊びしてたら嫌なの」



低く、甘く。

どこか期待にも似た揺らぎを孕んで、問われる。



…………。

…………え?


思考が、一瞬凍る。

いつもの揶揄いかと思ったけれど、それにしてはあまりに真剣な声音で、少し息が詰まった。