「熱測んな」
「あ、ありがと……」
まるで妹か弟かに向けるみたいな優しい声音にちょっと戸惑いつつ、小さな声でお礼を言って。
緩い胸元から手を差し入れ、体温を測ってみる。
数秒の間の後──
ピピッ。
軽い電子音と共に表示された体温は。
『37.7℃』
……まだ微熱、か。
ちょっと眉を寄せてしまった私に、遥風は身を寄せて結果を覗き込んできた。
ふわ、と濃く香る遥風の匂いと暖かい肌の気配に、一瞬息が詰まる。
と、そんな私の心境など知らず、遥風はちょっと呆れたようにため息を吐いた。
「下がりきんねぇな……。とりあえず水飲んで」
「うん……」
体温計と交換で手渡されたペットボトルの水に、素直に口をつける。
火照った身体の中を、冷たい水が通り抜けていくのがありありと分かった。
飲んで初めて、自分がとてつもなく水分を欲していたことに気がついて、私はこくこくと水を流し込み続ける。
遥風は、そんな私を目を細めたまましばらく見ていたけれど──
不意に、ぽつり、と。
「……ごめんな」
そんな一言を落としてきた。
脈絡のない言葉に驚いて、ペットボトルの飲み口から唇を離す。
「……何が?」
「勝手に着替えさせて。苦しそうだったから脱がしたんだけど……嫌だったろ」
そのどこか遠慮したような声音に、私はほんの少し息を呑む。
彼は決して、無神経で着替えさせたわけじゃない。
そう気づいた途端、さっきまで着替えに関してちょっと不満に思っていた自分が恥ずかしくなってしまって──
「全然大丈夫」
慌てて訂正するように、口を開いた。
言ってしまってから、ちょっと語弊があったか……とも思ったけれど、わざわざ訂正するのも必死に見えるので黙っておく。
