──それから、一体どれくらいの時間が経ったのだろうか。
微睡の中からゆったりと意識が浮上したとき、私は見覚えの無い部屋の中にいた。
夢と現の境で朦朧とした意識の中、まず認識したのは、暗がりの中淡く灯るテーブルライト。
そこから徐々に思考のモヤが晴れていくにつれ、身体の下の柔らかなベッドの感覚、空調の静かな風の音、ドアの向こうで人が歩く音などが認識されていく。
カーテンは既に閉められているけれど──
この暗さは、きっと夜だよね。
……スマホ、と探して枕元に手を伸ばすと、すぐに見つかった。
時刻は23時。
マップアプリを立ち上げて現在地を確認してみると、まだLUCAの敷地内にいるみたい。
……ってことは、ここはLUCAの寮の一室か。
昨日はほとんど徹夜でステージの準備をしていて、与えられた部屋は利用していなかったから分からなかった。
それと、多分ここに運んでくれたのって……遥風、だよね。
もう帰っちゃったかな、と思って、ゆっくりと上体を起こす。
途端。
胸元に、さらりと長い地毛がこぼれ落ちた。
……ウィッグ、外されてる。
って、ことは。
この流れにどこか既視感を感じて、私は恐る恐る、視線を落としてみる。
すると──案の定、というべきか。
男装用の特殊インナーは外されていて、無防備な素肌の上に、一枚だけ見覚えのあるパーカーを羽織ったような格好になっていた。
どう考えても大きいサイズ感、微かに残る柑橘系の香り──
明らかに、遥風のもの。
