さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜


パフォーマンスが、終わって。

ステージ袖に足を踏み入れた瞬間──


ずしん、と。

音を立てて、重力が戻ってきた。


いきなり鉄塊を背負わされたみたいな、衝撃。

両膝が砕けてしまうかのように軋んで。

麻痺していた頭痛までガンガンと容赦無く律動を再開し、視界がふらついて思わず壁に手をついた。


──なんで、急に、こんな……。

さっきまでは、全然平気だったのに。


あまりに突然襲いくる疲労に、大きく戸惑いかけたけれど。

すぐに、違和感に気が付く。


いや……違う。

これは、元から身体の不調を抱えていた本来の自分で。

異常だったのは、今までの私の方だ。


昨日の夜、曲を変えると決意してから、ステージが終わる今まで。

私は、人生で一度も経験したことがないような──


非現実的なまでの集中の中にいた。


ずっと、水中にいるような感覚で。

音も光も、外界の音も全部ぼやけてる感じだったけど、頭の中だけは信じられないくらいに冴え渡って──

高性能の計算機みたいに、止まることなく動いていた。