他の参加者たちに比べて、千歳の才能は分かりづらかった。
翔や栄輔、遥風のパフォーマンスの方が、分かりやすく観客の胸を揺さぶり、天才的だったから。
しかし、それは──千歳がまだ、『データの積み重ね』の最中だったから。
『This harmony's born from pain and light
From your love that gave me flight
(このハーモニーは 痛みと光から生まれた
君の愛が、僕に羽をくれたから)』
心臓に直接爪を立てられるかのように鋭利で、言葉にできないほどに美しい歌声。
乱れた前髪の奥、その宝石のような神秘的な瞳と、目が合ったかのような錯覚。
──ずっと待っていたよ、榛名千歳。
お前が、この一線に到達するのを。
そして、信じていた。
お前こそが、将来、日本のエンターテインメントを牽引する──
ステージの鬼才である、と。
『Now every breath I take is for you
(今、僕のすべての息づかいは──君のためにある)』
最終の一節。
それを、まるで羽のようにふわりと着地させ──
そして、静寂。
まるで時が止まったかのような、深く長い沈黙。
誰一人として、呼吸を忘れたかのように固まったまま。
そこにあったのは、ただ、奇跡を目にした者たちの、呆然とした気配だけ。
──もう、誰もくだらない噂のことなんて覚えていなかった。
まるで夢から醒めきれないように、観客の誰もがぼうっとした目でステージを見つめていた。
現実感のないままに、幻想に浸って。
その中心で──
千歳が、ゆっくりと顔を上げた。
