さっさと嫌いになってくれ〜アイドルオーディションで嫌われたい男装美少女、なぜか姫ポジ獲得?!〜



『So I’ll sing, not just for the show
But to let my true self grow
(だから歌うよ 命令じゃなくて
本当の自分を生きるために)』


叩きつけるような、ラスサビ。

男性の音域では到底届かない、爆発的な高音の連続。

しかし、そんな凄まじい技巧を感じさせないほど──


彼の言葉の一つひとつは、完璧に研ぎ澄まされていて。


一音ごとに、感情が滴る。

一語ごとに、心が削がれる。



少しでも触れたら、壊れてしまいそうな──

剥き出しの、脆い感情。



その瞳には、信じられないほど綺麗な涙が薄く滲んでいて。

それを見た途端、こちらの理性まで脆く崩れ落ちていきそうな錯覚に陥った。


「…Oh my GOD. Oh my GOD. OH. MY. ACTUAL. GOD. 」


うわごとのように呟き、大いに取り乱しているのはエリートクラスのボーカルトレーナー、ヴァレンシア・ランドル。


千歳にはあまり期待していなかった様子の彼女だが──

今や、自分が泣いていることにも気づいていない様子で、完全に圧倒されている。


「…Magnificent.(……見事だ)」


ルシは、肘をついた手で無造作に口元を覆っていたが──

それは、今にも笑い声が漏れ出しそうなのを堪えるような仕草だった。


瞬きを一切せずに、瞳孔の開いた目でステージ上の千歳を凝視している。

指の隙間から見える唇がわずかに歪み、頬は火照ったように赤い。


陶酔と戦慄がないまぜになったその表情は、『黒羽仙李』に魅入られていた若き日の彼そのものだった。