思えば、榛名千歳はきっと今、これまでに無いくらい『脳』を使っている。
その負荷はきっと常人には想像できないほど凄まじいだろうが──
もし今、その限界を、越えられたなら。
もしかしたら──
恐れと期待感が、混じり合う。
四つ打ちキックが、重さを増し、音数が徐々に増えてゆく。
反響するようなシンセが、エレクトリックギターが、小節ごとに重なる。
──ああ。
そのまま。
ストリングスの旋律が加速する。
せわしなく、螺旋階段を駆け上がるみたいに。
そのまま思考しろ。
ひとつ、またひとつと音が重なり、呼吸すら置き去りにするようなスピードで。
もっと、速く。
高揚感を煽る音色が折り重なるたび、胸の奥がせり上がってくるような感覚。
もっと、鋭く。
盛り上がりの最高潮、その瞬間へ──
もっと、強く!!
『Now I choose this voice is mine
(今なら言える──この声は、僕のもの)』
刹那。
カチリ、と全ての歯車が噛み合って──
奔流のように、彼の感情が雪崩れ込んできた。
ぞくぞくっ、と、電流にも似た凄まじい衝撃が、背筋を駆け巡って。
初めて『彼』を見た時の忘れられないあの感覚が、数十年ぶりに追体験された。
プロデューサーとしての本能が、叫ぶ。
──来た。
ついに──この瞬間が。
