そんな中、俺は内心でほくそ笑む。
……そうだ、目に焼き付けるがいい。
これが、日本の『静』の美だ。
目を逸らすことが許されない緊張と、息を呑むような集中が宿る──
静かに研ぎ澄まされた、繊細な美。
西洋が求めるのは、派手さ、そして爆発的な感情表現であるということは重々承知の上。
そして、決してそれを否定はしない。
しかし──
我々EMERGENCE PRODUCTIONは、西洋の美に迎合するつもりなど、決してないのだ。
驚愕したように瞳孔を見開くルシを横目に、俺は黙って腕を組んでステージを見つめていた。
──でも、だからと言ってローガンに勝てるか、といえば。
おそらく、難しい。
なんせ、ローガンは現地の観客やトレイニーからの圧倒的な人気を誇り、対して千歳は知名度ゼロ。
しかも、根も葉もない噂を流されているという大きすぎるディスアドバンテージ付きときた。
このままだと、おそらく無理。
そう、このままだと、な。
榛名千歳──
お前のパフォーマンスは、そんな単純な一枚絵で完結するものじゃないだろう?
と、そんな俺の思考を読み取ったかのように。
音楽がブリッジパートへ移行したとき、氷のように冷たく整ったパフォーマンスに──パリ、と。
微かな、しかし確かな『亀裂』が入る音が聞こえた。
『But then you looked at me, like I was real
Not a product, not a dream, something to feel
(でも、君が僕を見つめた時 まるで本物みたいに
売り物でも夢でもないって信じてくれた)』
今まで存在しなかったはずの感情が、徐々に滲み出ていく。
これまでは『表現力がない』という短所を徹底的に研ぎ澄ましてきたからこそ──
観客は、その小さなギャップに惹き込まれる。
