収録用の席は、一次審査の順位に沿って配置されていた。
私は7位。左隣には6位の新海飛龍、右隣には8位の菅原琥珀が座っている。
──新海飛龍。
長身でがっしりとした体格に、鋭い眼差し。
一見すると治安が悪く、近寄りがたい印象だけど、口を開けば素直で親しみやすい。
どこか少年らしさの抜けきらない、素直で明るい性格の持ち主だ。
ちなみに、エマプロ3期のダンサーツートップである新海飛龍と椎木篤彦は、どちらも関西人らしい。
ダンスは西日本の方が強いってよく聞くけど、2人を見ているとなんだか納得できる気がした。
一方の菅原琥珀は、都会的でカジュアルな雰囲気を纏う美少年。
彼の名前は、オーディション前から知っていた。
総フォロワー数200万人のダンス系インフルエンサー『こはく(16)』として、既に中高生の間では知名度の高い彼。
あまりSNSを使わない私でも、彼のショート動画は目にしたことがあるくらい。
だから、彼がこのオーディションに参加していると聞いたときは少し驚いた。
既に人気者である彼が、わざわざここに挑戦しに来るなんて。
けれど、それほどまでに『エマプロからのデビュー』は価値のあるものなんだろうな。
なんてったって、天鷲翔や兎内陽斗、皆戸遥風なんかの有名人も参加しに来るほどなんだから。
そんなことを考えながら琥珀の姿をぼんやりと見ていると、ふと彼の視線がこちらに向いた。
「お?姫と隣じゃん。よろしくー♪」
目が合うなり、軽い調子で話しかけてくる。
SNSの印象通り、フレンドリーでどこか軽薄そうな雰囲気。
……っていうか、今なんて?
「……姫?」
怪訝な顔をすると、琥珀はちょっと目を丸くした。
「知らねーの? お前、参加者の間で『姫』って呼ばれてるぜ。結構前から」
なにそれ。
他の参加者に比べたら中性的だから?
それとも、この高飛車な性格も込みで?
男子校で、童顔で小柄な生徒が周囲から愛でられる『姫ポジ』になるって聞いたことがあるけど、そういう感じなのかな。
「でもさ、近くで見たらマジでお姫様みたい。かわいー♡」
琥珀の視線が、撫でるように私をなぞる。
──その瞳には、甘い色が滲んでいた。
昨日のパフォーマンス後から、こういう類の視線を向けられることが多くなった。
廊下を歩いていると、特に認識していない参加者から手を振られるし、食堂で朝食を取っている最中、急に連絡先を聞かれるし……。
私は頭の中で、今朝の食堂でのやり取りを思い出す。
『千歳くん、インスタ教えてー!』
『なんでお前なんかに教えなきゃいけないわけ』
『ツンデレたまんねえー♡』
『もっかいちょーだい!もっかい!』
……といった感じで、なんかもう、完全にナメられてる。ネタ枠課題曲のせいで、私まで完全にネタ枠扱い。
ツンデレ、って、文字通りツンとデレのギャップがある萌え属性のことじゃないの?
私にはまったくもってデレ要素はないのに、勝手にデレてることにされるのは心外すぎる。
一次審査でインパクトを残そうとしすぎた副作用がこれか……。
正直、めちゃくちゃ面倒。どれだけ冷たい態度を取ろうと、のれんに腕押しになってしまうんだから。
内心ため息をつきつつ、私は琥珀から視線を逸らす。
彼、菅原琥珀は、実力・ビジュアル・ファンダムのすべてを兼ね備えたデビュー有力候補。
できるだけ関わりたくない。むしろ嫌われておきたいな。
そんなことを考えていた矢先──
ふっ、と照明が落ちた。
私は7位。左隣には6位の新海飛龍、右隣には8位の菅原琥珀が座っている。
──新海飛龍。
長身でがっしりとした体格に、鋭い眼差し。
一見すると治安が悪く、近寄りがたい印象だけど、口を開けば素直で親しみやすい。
どこか少年らしさの抜けきらない、素直で明るい性格の持ち主だ。
ちなみに、エマプロ3期のダンサーツートップである新海飛龍と椎木篤彦は、どちらも関西人らしい。
ダンスは西日本の方が強いってよく聞くけど、2人を見ているとなんだか納得できる気がした。
一方の菅原琥珀は、都会的でカジュアルな雰囲気を纏う美少年。
彼の名前は、オーディション前から知っていた。
総フォロワー数200万人のダンス系インフルエンサー『こはく(16)』として、既に中高生の間では知名度の高い彼。
あまりSNSを使わない私でも、彼のショート動画は目にしたことがあるくらい。
だから、彼がこのオーディションに参加していると聞いたときは少し驚いた。
既に人気者である彼が、わざわざここに挑戦しに来るなんて。
けれど、それほどまでに『エマプロからのデビュー』は価値のあるものなんだろうな。
なんてったって、天鷲翔や兎内陽斗、皆戸遥風なんかの有名人も参加しに来るほどなんだから。
そんなことを考えながら琥珀の姿をぼんやりと見ていると、ふと彼の視線がこちらに向いた。
「お?姫と隣じゃん。よろしくー♪」
目が合うなり、軽い調子で話しかけてくる。
SNSの印象通り、フレンドリーでどこか軽薄そうな雰囲気。
……っていうか、今なんて?
「……姫?」
怪訝な顔をすると、琥珀はちょっと目を丸くした。
「知らねーの? お前、参加者の間で『姫』って呼ばれてるぜ。結構前から」
なにそれ。
他の参加者に比べたら中性的だから?
それとも、この高飛車な性格も込みで?
男子校で、童顔で小柄な生徒が周囲から愛でられる『姫ポジ』になるって聞いたことがあるけど、そういう感じなのかな。
「でもさ、近くで見たらマジでお姫様みたい。かわいー♡」
琥珀の視線が、撫でるように私をなぞる。
──その瞳には、甘い色が滲んでいた。
昨日のパフォーマンス後から、こういう類の視線を向けられることが多くなった。
廊下を歩いていると、特に認識していない参加者から手を振られるし、食堂で朝食を取っている最中、急に連絡先を聞かれるし……。
私は頭の中で、今朝の食堂でのやり取りを思い出す。
『千歳くん、インスタ教えてー!』
『なんでお前なんかに教えなきゃいけないわけ』
『ツンデレたまんねえー♡』
『もっかいちょーだい!もっかい!』
……といった感じで、なんかもう、完全にナメられてる。ネタ枠課題曲のせいで、私まで完全にネタ枠扱い。
ツンデレ、って、文字通りツンとデレのギャップがある萌え属性のことじゃないの?
私にはまったくもってデレ要素はないのに、勝手にデレてることにされるのは心外すぎる。
一次審査でインパクトを残そうとしすぎた副作用がこれか……。
正直、めちゃくちゃ面倒。どれだけ冷たい態度を取ろうと、のれんに腕押しになってしまうんだから。
内心ため息をつきつつ、私は琥珀から視線を逸らす。
彼、菅原琥珀は、実力・ビジュアル・ファンダムのすべてを兼ね備えたデビュー有力候補。
できるだけ関わりたくない。むしろ嫌われておきたいな。
そんなことを考えていた矢先──
ふっ、と照明が落ちた。
